弁護士コラムバックナンバー

事業の出口戦略(廃業)について

清水 敏

 はじめまして。 はじめて本コラムに参加する弁護士の清水敏と申します。

 商事会社に11年勤務した後、弁護士業を開始してから5年となります(63期)。

 私のコラムの第1回目は、「廃業」についてお話したいと思います。

 平成25年11月より、弁護士、税理士、経営コンサルタントなどで構成する「会社の幸せなたたみ方支援プロジェクト」を立ち上げ、廃業に悩みをもつ経営者に対して、事業の出口戦略としての廃業について、いつ・何を準備し、利害関係者の調整をはかり、廃業後の幸せな生活の設計を立てる支援をしています。

 また、事業の再生に関しては、平成23年5月にNPO法人中小企業再生サポート(協会東京都認証特定非営利活動法人(23生都管特第156号))を設立し、合わせて支援活動をしております。

1 「廃業」とは?

 ここで「廃業」とは、理由のいかんを問わず、自己の事業をやめることをさします。例えば、事業自体は存続しない事業停止・破産などのみならず、事業自体は存続する事業承継も含み、「経営基盤の弱い企業が市場から退出するもの。」という暗いイメージのものだけではありません。

 弁護士業務の中で、会社・個人事業を問わず廃業に関する相談が多いことに気が付きます。

 また、中小企業庁や金融庁など国の機関や金融機関も、経営者保証に関するガイドラインの適用開始、事業支援整理ローンの創設など積極的に廃業の支援を行おうとしており、社会全体として関心が高い事柄となっています。起業ないし受け継いてきた事業の出口戦略として廃業の支援は現代社会の要請となっているのです。

2 廃業に至る理由とは?

 廃業の相談理由はさまざまで、経営者の人的な理由(高齢化、健康問題、経営者の家族の介護・教育など。)、事業的な理由(売上・利益の減少、販売先・取引先の減少など。)が挙げられます。

3 弁護士による支援

 弁護士の目線からは、企業の経営者が廃業する際には、先ず事業継続の可能性を模索し、引退する経営者に対しては、長期間にわたる経営に報いるための相応の資産を残す、あるいは負債を残すような引退にならないような廃業プラン設計を作ることとなります。また、廃業するためには何が問題点かを洗い出し、いかなる支援が必要かなどの切り口から入ることもあります。

3 典型例

 典型的な問題例として、廃業の際の自宅の保全が挙げられます。事例を見てみましょう。

 Aさんは、甲市で年間の売上が数億程度の印刷会社を営んでいた。 年齢も68となった。学生時代の同期は企業を退職し、退職金をもらって悠々自適の生活をしており、自分も引退して夫婦二人で好きな旅行をのんびり楽しみたいと思っている。ところが、引退したいものの後継者がいない(息子は同業を営んでいるが、Aさんとの関係が悪く、いまさら継ごうとも思っていない。)。 また、銀行から売り上げと同程度の借入金(当然、Aさんは連帯保証人。)があり、仮に会社の不動産などの資産を処分しても、全額弁済できる額ではない。借入をリスケジュールし、金利の一部を返済してくことで(これでは、元本はいつになっても減りません。)、ようやく事業を継続している。

 このような事例で、破産手続きなどの法的手続きに入れば、Aさんは会社の連帯保証人ですので、ローンを完済したばかりの自宅、住む家を失ってしまいます。長い間、汗水ながして働いた結末としては、あまりに厳しい現実です。その結果、Aさんは廃業の決断ができず、やめる・やめないを逡巡しながら、やむをえず会社を継続しています。

 長い間、日本の経済を支えた経営者で Aさんと同じような境遇にある方は多いと思われます、であるからこそ、ようやく国や金融機関も支援を始めているわけです。

事業の廃業、事業の再生についてお悩みの際は、どうぞお気軽にお問合せください。

以上

本コラム中の意見や推測にわたる部分は、執筆者の個人的見解であり、ひかり総合法律事務所を代表しての見解ではありません。
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